第1回
射撃を始めるぞ!初心者講習までの道程編
殿下のコラムメニューへ戻る

今このページを見ているとあなたは、クレー射撃というものに何らかの興味を持っているということと思います。少し前の私も同じような人間のひとりでした。その私がもうすぐクレー射撃を楽しむために銃を所持します(2003年1月現在)。銃を持つ(所持許可を得る)為には幾つかの手続きと試験を経る必要があります。これからこのページではクレー射撃を始めるための猟銃(散弾銃)の所持許可手続きについて、私の体験を交えながら解説したいと思います。

§1はじめに

1-1.銃を所持する目的

銃を持つためには目的が必要です。私はクレー射撃ですし、ある人は狩猟かもしれません(狩猟は銃の所持許可に加えて狩猟免許が必要です)。このコラムの目的が「クレー射撃をこれから始める人と初心者のために」ということもあり、ここではクレー射撃をするということを目的として話を進めます。勿論、狩猟目的であっても銃の所持許可手続きは同じなので、参考になると思います。
なお、銃(特に散弾銃)は芸術品といえるような彫刻を施したものもあります。しかし、日本では芸術品として・コレクションとして銃を所持することは法律で認められていません。必ず目的があって・その目的のために使用する銃が所持できるということになります。この目的は後に説明する手続きでも重要な要素の一つとなります。

1-2.クレー射撃とは

クレー射撃(標的射撃とも言います)について簡単に説明します。まだ私も所持許可が下りていないので実際に競技を行ったことはありません。(^^ゞ ですから「ふーん」という感じで見て頂ければ結構です。
クレー射撃には幾つかの種類があります。それぞれ競技の仕方、ルール、などが異なります。まだこの段階ではどの競技を行うか決めなくても良いのですが、厳密にはそれぞれ競技で使用する銃も異なりますので、銃を購入する時期には決めておく必要があるでしょう。
では、それぞれの競技を簡単に説明します。

●トラップ

クレー射撃の競技の中で最もメジャーなものです。前方のクレー射出口からまっすぐ・左斜め・右斜めの何れかにクレーが1枚だけ飛ばされます。これを撃ち落すのですが、1枚のクレーに対して2発の弾を撃つことが出来ます。これを横に並んだ5つの射台(銃を撃つところ)で5回ずつ繰り返し25枚のクレーを撃ちます。実際の競技では25枚×4回=100枚撃って、撃ち落した数を競います。

●スキート

ちょっとマイナーで、トラップに比べて競技人口は少ないです。但し、大抵の射撃場で楽しむことが出来ますし、関西方面では結構行われているという噂です。
この競技は左右にあるクレー射出口のどちらか一つから、または2つ同時にクレーが発射され、これを撃ち落すものです。1枚のクレーに対して、1発の弾しか撃てません。トラップの射台は横に5つ並んでいますが、スキートの射台は半円とその中心の計8箇所あります。スキートも25枚×4回=100枚撃って、撃ち落した数を競います。

●ダブルトラップ

競技人口は少ないようです。基本的にはトラップなのですが、トラップではクレーが1枚しか飛びませんが、ダブルトラップでは同時に2枚のクレーが飛び出し、これを撃ち落す競技です。トラップの倍の50枚×3回=150枚で、撃ち落した数を競います。

その他、フィールド射撃やスポーティングクレーという競技もあり、競技の内容はトラップ・スキート・ダブルトラップを組み合わせたようなものです。ここでは詳しく説明しません。競技について詳しく知りたい方は、このサイトの管理者まで要望したら、そんなページが出来るかもしれません。

1-3.銃を持てない人、持てない可能性のある人

銃は扱い方によっては大変危険なものなので、持てない人・持てない可能性がある人というのが法律で決まっています。

●銃を持てない人

  1. 20歳未満のもの。猟銃(散弾銃・ライフル銃)は20歳以上でないと所持できません。但し、特別の許可を受ければ、18歳以上でも所持できます。
  2. 精神病者、アルコール、麻薬、大麻、あへん若しくは覚せい剤の中毒者又は心身耗弱者
  3. 住居の定まらないもの(住所不定者)
  4. 銃の所持許可を取り消されてから5年を経過していないもの
  5. 銃の不法所持などで罰金刑以上となり5年以上経過していないもの
  6. 殺人罪、強盗罪、強姦罪、誘拐罪、傷害罪、恐喝罪、逮捕監禁罪を犯した日から10年を経過していないもの
  7. 6)の罪の刑を終えた、または刑を受けることがなくなってから5年を経過していないもの
  8. 殺人罪、強盗罪、公務執行妨害罪、常習賭博罪、傷害罪、凶器準備集合罪、恐喝罪を犯す恐れのあるもの、いわゆる暴力団関係者
  9. 他人の財産や公共の安全を犯す恐れがあると認められるもの。殺人罪等を犯し再犯の恐れのあるもの、飲酒等により凶暴な言動をするもの、激情型の性格のもの
  10. 銃の所持許可にあたって虚偽の申請をしたもの

●銃を持てない可能性のある人

  1. 同居人に前項8)または9)に該当するものがいるもの
  2. 銃砲の保管義務または譲渡の制限に違反し、その刑を終えた、または刑を受けることがなくなってから5年を経過していないもの

年齢制限以外は善良な一般市民であれば問題ないはずの項目ばかりです。しかも上記に当てはまらない人は、原則として銃の所持が認められるということになります。こう考えると意外と間口は広いと思いませんか?

1-4.家族の理解

銃を所持する本人は持ちたい気持ちが一杯ですが、家族にとっては馴染みの無いものがやってくるので不安に思っているかもしれません。この『家族の理解』というものは非常に大事なもので、教習射撃認定手続きか所持許可申請の際に所轄警察署から「あなたの家族が銃を所持するんだけど同意してますか?」なんていう問い合わせが家族にきます。この時あなたの家族が「実は反対なんですよ」と言ったら、ほぼ間違いなく許可は下りません。ということで、家族とは充分話し合って、銃の所持について同意を貰うようにしましょう。

§2.試験があるのでお勉強

猟銃の所持許可を得るには、以下の手続きを踏む必要があります。東京都は警視庁のサイトで概要が紹介されています。

  1. 初心者講習
  2. 教習射撃資格認定
  3. 教習射撃
  4. 所持許可申請

猟銃の所持許可を出すのは都道府県公安委員会なのですが、その手続きは都道府県の警察署が代行しています。また所持許可を貰ってからも、火薬の許可(これがないと弾が買えない)も警察署が窓口となります。警察署とは長いお付き合いとなるので、仲良くしておきましょう。なお、窓口となる警察署は、住所地を管轄する警察署(所轄警察署といいます)となります。
この手続きの中で1.初心者講習で筆記試験(考査)が、3.教習射撃で実技試験があります。実技試験のための練習は出来ないのですが(銃が持てませんので)、筆記試験のための勉強は出来ます。

2-1.まずは勉強

まずは初心者講習で行われる筆記試験のための勉強ですが、猟銃の所持許可に関して、国家試験や資格試験のように一般の書店で参考書や解説本などは売っていません。(T_T)
じゃあ勉強する手段がないかというとそうでもなくて、一般の書店には置いてありませんが、大抵の銃砲店には『銃砲所持許可取得の要点』という小冊子がおいてあります。定価は300円(2002年10月現在)なのですが、お店によっては無料でくれたりします。お近くの銃砲店が判らない場合は、このサイトの管理者へメール頂くか、掲示板にあなたのメールアドレス付きで発言してください。

銃砲所持許可取得の要点
はじめて銃を持つ人のために


大抵の銃砲店に置いてあると思います。価格は300円(2002年10月現在)。
東京の某銃砲店さまでは、ホームページにあるチケットプリントして持ってゆけば無料で貰えました(2002年10月現在)。
ほぼ同じ内容が社団法人日本猟用資材工業会のサイトでも閲覧できます。

で、勉強を始めたのは2002年10月中旬です。その方法は丸暗記。(^o^)丿
勉強用に小さなノートを用意して、重要と思ったところは写していく。こうして出来上がった勉強用ノートを仕事の行き帰りなどで暗記するという勉強をしました。

小冊子の内容は、

  1. 銃砲刀剣類所持取締法
  2. 火薬類取締法
  3. 鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律
  4. 銃を所持する者の一般心得

から成り立っていて、覚えなければいけない量は大したことはありませんが、どの内容も所持許可取得するためだけではなくて所持許可取得後も必要な知識な(ようです)ので、きちっと勉強したほうが良いと思います。特に数値が定められている規定(銃身長など)は、特に念入りに覚えたほうが良いでしょう。
また、小冊子の巻末には模擬問題が付いています。本番の問題より素直な設定の問題ですが、これが出来ればほぼ合格できるでしょう。本番の初心者講習の試験は、もう少し注意深く読まないと引っ掛けられる問題文の書き方となっています。

§3.いざ警察署・・・初心者講習の申し込み

さあ、最初の関門の初心者講習(正式には猟銃等講習会)の申込に警察署へ行きましょう。警察署の窓口は生活安全課(保安係)という部署です。おそらくどの都道府県警察署でも同じと思います。自信がなければ警察署へ電話して「銃砲担当はどの部署でしょうか?」と問い合わせれば教えてもらえます。

3-1.準備

まずは初心者講習申込に必要なものの準備です。必要なものは以下の通りです。

猟銃等講習会申込書 銃砲店や警察署に置いてあります。1〜2枚(必要な枚数は都道府県によって異なります)
写真 ライカ版(36mm×24mm)。1〜2枚(必要な枚数は都道府県によって異なります)
住民票 省略の無いこと
手数料 6,800円(2002年11月現在、東京都)
印鑑 認印で大丈夫。シャチハタは不可かもしれない。

猟銃等講習会申込書は、警察へ申し込みに行った時その場で貰って書いても良いのですが(私は警察署で貰いました)、最近のWebSiteを持っている銃砲店では、書類のダウンロードが出来るようになっていたりするので、それを利用しても良いでしょう。但し、たまに書式が変わりますので、注意(警察署で渡すときにきちんと確認)しましょう。
写真は、提出前6ヶ月以内に撮影した無帽、正面、上三分身のライカ版となります。ライカ版という馴染みのないサイズなので、我が家の近所の写真屋さんでは(@_@)な感じでした。そのためスピード写真をとって自分で切り抜きました。
住民票は、普通に取得すると本籍地や同居人の表記が省略される場合があるので注意しましょう。
また申込書や写真は、都道府県によって必要な枚数が異なります。生活安全課へ問い合わせれば教えてくれます。

3-2.まずは電話から

必要なものが揃ったら申込なのですが、いきなり警察署をアポなしで訪ねるのは思い止まって、まずは電話をして担当者や都合を伺ってみましょう。あなただって突然訪れた見ず知らずの人間に、いきなり資料を突きつけられるよりは、事前に電話の一本もあったほうが良い印象を持ちますよね。
私の場合は、最初に電話したら担当者が事件で出動中で名前だけ確認、翌日にまた電話して以下のようなやりとりをしました。

私:『猟銃を所持するために初心者講習を受けたいのですが』
係官:『いや〜止めといたら、お金とか一杯かかるよ』
私:『承知しています、でもクレー射撃をやりたいのでお願いします』
係官:『我々も忙しいからねぇ』

このままでは先に進まないと思い、これから伺うから話をさせてくれとお願いし了承を貰いました。但し、場所を変えても係官は同じ態度でした。(-_-;)

『趣味ならゴルフにすればいいのに』
『お金もかかって大変だよ』
『会社にもあなたのことを問い合わせるけど大丈夫?』
『近所にもあなたの評判を聞き込むけど』
『犯罪を犯してたら銃は持てないよ。犯暦なんてすぐにばれるから正直に言ったら?』
『親兄弟まで調べるからね』

などなど、係官の『諦めなさい攻撃』が続きました。ここで重要なのが『銃を所持する目的』です。私は前科など無いこと、近所・会社へ聞いてもらっても良いこと、生涯の趣味としてクレー射撃を楽しみたいこと、お金には余裕があること(これは嘘つきました)を丁寧に答えました。とどめが「チャンスがあれば国体にも出場したいです」の殺し文句です(考えた台詞ではなく、思い付きでしたが)。

係官:『判ったけど今日は受け付けられません』
私:『???』
係官:『住民票が必要だけど持っていないでしょう』
私:『持っています』
係官:『本籍地も載っていないと駄目だよ』
私:『本籍地だけでなく、全部記載でとりました』
係官:『写真も必要なんだけど』
私:『写真もあります、4枚で足りますか?』
係官:『・・・・・・』

正直に言って『失敗した』と思いました。係官も人間です。心証を悪くしたら、後々の手続きにも響くかも。これから長くお付き合いするのに、機嫌を損ねて嫌われたらマイナスです。暫く沈黙が続いた後、

係官:『11月の講習会日程が判らないので、悪いけど11月に入ってから来てくれるかな』
私:『11月の日程なら・・・・』

実は警視庁のサイトで講習日程は調べていたのですが、これを言ったら係官の息の根を止めると思い、素直に11月に入ってから再訪することにしました。

この体験談から「警察って・・・」と思った方は、ご自分の手続きのときに気を付けてください。この程度で苛立ったりしては駄目です。銃を持てない人の条件に「激情型の性格」というのがありましたね。それを試されていると思うくらいに心を広くもって対応してください。
また、生活安全課というところは銃砲だけでなく、風俗関係・古美術関係なども取り扱っている忙しい部署です。どちらかというと銃砲関係は「付録」のようなお仕事のようです。そんなお仕事は後に回したくなる気持ち、警察官の立場になってみれば理解できますよね。(^^ゞ

心の広い私は、素直に11月に入ってから再度お電話してから警察署へ出向き、初心者講習の受付をして頂きました。この「電話のアポ取り」というのも大事です。私の場合、訪ねようと思っている日の前日、当日の出掛ける直前、の2回も電話することにしています。警察は24時間365日年中無休で営業していますが、手続きが出来るのは月〜金曜日の9:00〜17:00です。平日がひまひまな人はよいのですが、私は普通の会社員なので手続きには仕事を休む必要があります。出来るだけ空振りが無いように、事前に電話してアポを取るようにしました。それでも事件で出動されて空振りだったこともありました。そんなときも決して怒らないように。警察官は安全を守るために働いているのですから。

短気な人に銃は持てません

なお、初心者講習の申し込みを行うと、下のようなテキストを貰えます。巷では分かり難いと評判ですが、私にとっては結構参考になりました。所持許可に関わる各種申請書のサンプルも載っているので、実際の手続きにも役に立ちそうです。私が受け取ったのは平成14年4月1日 10訂版 という版でした(2002年10月現在)。あまりにも古いと内容が変わっている可能性がありますし、初心者講習でも使用しますので、必ず版はチェックしましょう。

猟銃等取扱読本
猟銃を所持しようとする方のために

所持許可に関する手続きについても詳しく載っているので、非常に参考になります。

以下、講習の実際編、教習射撃編へ続く...