特集第7回
後付け加工
アジャスタブル・コム
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●射撃場での話題の一つに銃床の話題があります。どこの射場でもベテランを中心に銃床をいじってばかりいる人が何人もいます。若い人でも中古で買った銃の銃床のベンドやキャストが合わなくて削ったりしている人を見かけます。まあ年輩の方や国体出場組は皆お金持ちなので、新規に銃床を作ったり、銃を買い替える時に銃床をカスタムしたりして銃を体に合わせてしまいますが、貧乏な我々はそうもいきません。

●銃床形状のどこが合わないのか。
銃床に不満のある方は、御自分の銃のどの点が不満なのかを明確にする必要があります。
一般には以下のような問題があります。

(1)グリップを握った時のトリガーまでの指の掛り方(距離)
(2)親指付根の入る切り込み部分の形状
(3)銃床の長さ(プル)
(4)銃床のベント
(5)銃床のキャスト

と、まあこんなところだと思います。このうち(1)から(3)までは銃床そのものの改造が必要なので、削ってすむ場合以外は、作り直しの必要があるかと思います。
(4)と(5)に関してはこれは確実に作り直しになってしまいます。
そこで登場するのが「
アジャスタブル・コム」です。これは下の写真のように、銃床(元台)の頬に当たる部分(チークピース)を、可動にすることで、ベントとキャストを可変にすることができるようにするものです。

上が加工前の銃床、下が加工後の銃床

私のように、ほっぺたに多少お肉のある方などは、最適な状態に持っていけるので、重宝しています。海外では当たり前の物で、出荷時に初めから付いている場合も多く、ベレッタや、ペラッツイばかりでなく、SKBでも輸出用モデルには初めから付いています。また競技用ライフルではあるのが当たり前です。
ただし高い銃にはグレードの良い銃床が付いていますから、下手にいじらずにそのままお使いになるか、まったく新しくお造りになった方が良いでしょう。
またこれは基本的には
トラップ銃を対象にしています、御注意下さい。

●どのようにして改造するか。
今回、私の銃はSKB製(MJ−5)なのでSKBで加工していただきました、加工費用は4万円台です。SKBの場合は新銃購入時にオプションとしてオーダーすれば、もう少し安く出来ると思います。またこれで色々と試してみて、決定した価で新しく銃を購入される時に銃床のカスタムを依頼されると、ご自分にぴったりの銃床を作ることができると思います。他のメーカーの場合は、カスタム出来るショップに依頼しての取り付けとなりますが。それ程高くはないと思います。
現在ベレッタを除く国内外各メーカーが採用している製品はほぼアメリカの「
GRACO社」の製品です、後付け加工の場合もこの製品になる場合が多いでしょう。

●加工後の外観と付属品
加工後の実際の形状は下の写真の通りです。なかなかかっこいいと思いませんか?私はけっこう気に入っています。

加工後の私のMJ−5です。

さて製品には下写真のような付属品が付いています。内容は簡単な英文の説明書とレンチ、20枚のベント調整用のプラスチックワッシャーです。

製品に付属のレンチと調整用ワッシャー。

●調整方法
それでは調整の実際を解説しましょう。

○チークピースの取り外し
まず付属のレンチでチークピースの横に開いた穴の中のネジを緩めます、ただし
180度以上は回さないようにしましょう、つまり左へ半回転以上は回さないことが大事です、このネジは穴径より大きいので無理に回して緩めようとすると、チークピースの穴付近にひびを入れることになる場合もあります。締める場合も軽くしめればOKです、無理に締めると外れにくくなってしまいます。

付属のレンチで反時計回りで半回転。

チークピースを外すと下の写真のようになります。この状態でいろいろと調整するわけですが、随分と簡単な構造です。それだけに壊れにくいようです。

はずすとこんな状態です。

○キャストの調整
キャストの調整は下の写真のように、元台側に付いているポストの中心のネジを付属のレンチで緩めて行います。この時も緩めるのは半回転でOKですあまり緩めると外れてしまいます。

半回転緩める。

この時にポストの横にある縦線と基台にある目盛りを使って固定する位置を決定します。
調整の基本は、構えた時に頬付けをきっちりした状態で顔が傾かずに目が入っている(正しく照準した状態)ように調整します、実際には鏡を使うか、誰かに銃口側から確認してもらって、瞳の中心に照星が来るようになった状態が正しい状態です、また目をつぶって銃を構え、目を開いた時に、照星と中間照星が正しく真直ぐに並んだ状態で見えればOKでしょう。とにかく調整してOKになればあまりいじらない方がよいでしょう、左右の位置調整は一度すれば、あとは顔が太ったり痩せたりしないかぎり再度いじる必要はありません。
ちなみに左右に1/16インチ動かすと、30ヤード先では、銃身長によりますが1インチから1.5インチの範囲でパターンの中心(POI)が移動します。

○ベントの調整
ベントの調整は下写真のように付属のプラスティックワッシャーを挟むことで行います。ワッシャーの厚さは1枚が1/16インチです。1つのポストに最大10枚まで入れることが出来ます。

ワッシャーで高さを調整

こちらも左右の調整と同じで、1枚いれると30ヤード先ではパターンの中心が1から1.5インチ移動することになります。理論的には10枚入れると15インチ移動することになりますが、実際にはもっと移動量が大きくなるようなので、射場が空いているときに、射出方向を指定してクレーを飛ばしてもらい、クレーの割れかたを見て決定しましょう。トラップでは最近のトレンドに則って、多少浅めのベントにセットするのが良いでしょう。これも一度決定したら無闇にいじらず、その状態で十分に撃ち込んで下さい。調整式だからといって、やたらといじるとなにがなんだか解らなくなってしまいます。とくに初心者は、左右の調整だけきっちりしたら、最初はワッシャー2枚で十分に撃ち込んで、ある程度上手くなったらベントを浅めに持っていくのが良い様です。
最後に下写真のように、レンチで軽く締めて取り付け完了です。

レンチで軽く締めて取り付けます

なお2挺の銃をお持ちの方で、両方の狙点を揃えるのにも役立つらしいです、実際銃床のベント調整は上級の射手以外はあまり意味がないので、皆にお勧めする改造ではないのですが、どうしても銃床をいじりたくなった場合は、貧乏な我々は「40万〜80万出して銃床作れば当たるようになるよ」なんて言われて買える金があるわけじゃないし、この方法は一番安上がりです。